番外編「ゲテモノ食い紀行」



撮影で様々な国を回ると、想像を絶する物を口にすることになる。
避けて通ることも可能だが、場合によっては、もてなしてくれた好意を無にすることにもなり、意を決して口に放り込むことも必要となる。
(大体の場合、ヤバイかも・・と思って食べると、酷い目に遭う。)
基本的には出された物は、美味しく頂くことを信条にしているが、時には勇気のいる行為にもなる。


タイ編

カブトガニ

日本では天然記念物のカブトガニ。ダーズベーダーを思わせる不気味な生き物を、タイの屋台で見つけた。
見れば見るほど不気味だが、何処を食べるのか興味をそそられた。
1匹買ってみると、屋台のおばちゃんが、ボイルされたカブトガニを二つに開いてくれた。
中から鮮やかなオレンジの卵巣がでてきた。
ちなみに身と思える部分は全く無い。
おばちゃんがカレースプーンをくれたので、卵巣をほじくって、口に運んでみた。
うまい。大味なカニ味噌が濃厚な油で固まった感じ。
ビールが欲しくなり、SINGERビール(タイの大手ビール会社)で流し込むと、ねっちりとした油分が胃に流れ込んで行くのが心地よい。
私は喜んで食べたが、私以外は一口食べて全員拒否。



モンゴル編

タルバガン

「地球の歩き方」等の旅行情報誌でも、絶対に口にしてはならないと記されているのが、モンゴルのタルバガン(ネズミ)である。
ペストの媒体であり、食べることは勿論、狩猟することも禁じられている。
しかし、昔からある食文化は、民族にとって根強い。
ある日、私達のキャンプにタルバガンを密猟者が売りに来た。
絶対に食べてはいけないという文章を何度も読んでいるため、気が進まなかったが、好奇心旺盛な同行者が購入。
興味を持ったのは、その調理方法である。
購入したタルバガンは首から上は切り落とされている。
調理してくれたモンゴル人は皮を破らぬように首の穴から、中身をすべて取り出し内蔵を捨て、身をぶつ切りにする。
肉を切り終えると、焼いた石と共に皮に戻され首の穴は縫って閉じられる。
さらに、トーチバーナーを使って外側から焼くことで、(本来は焚き火に放り込む)中からは蒸し焼き、外からは丸焼き状態でじっくり調理される。
焼き上がったタルバガンは、首のない宇宙人。
宇宙人など無論見たことは無いが、地球上の生き物にしてはあまりにも滑稽で、無防備な姿である。
腹を一気に裂き、石と共に出てきた肉を食べてみた。
獣臭い、少し硬めの肉。暫く噛んでいると、味が少しずつ染み出してくる。
決して旨くは感じなかったが、モンゴル人にとってはごちそうらしく、近くのゲルからも集まってきて皆嬉しそうに食べていた。
ちなみに、密猟のタルバガンは日本円で3000円。
一ヶ月を1万円程度で一家族が生活する遊牧民にとってはスペシャルなご馳走なのかもしれない。



馬の金玉

モンゴルで馬の去勢(より良い体を作る為に、金玉を取る)に立ち会ったとき、馬を数人で押さえつけ、金玉をグリグリと何回転も回してねじり切る。
ねじることで、血管を潰し、止血をするのだそうだが、これ以上の拷問はない。
見ているだけで女性には解らぬ痛みが股間に乗り移り、縮み上がってくる。
落ち着き無く無駄にうろうろと内股で歩き回ってしまう自分の姿が情けなく滑稽なのは解るが、どうにもならない。
本人(馬)も長い首を必死に曲げて、一部始終を見ている。
やがて、ブチッと金玉はちぎれるのだが、驚いたことに、去勢をしているモンゴル人は、本人(馬)が見ているその前で、ちぎり取った金玉を口に運び、一口がぶり。
正直、これにはぶったまげた。
おそるおそる、ナイフでスライスした金玉を口に含んでみた。
たち(白子)のもっと濃厚な味が口の中に広がってくる。
さすがに味を確認するだけに留め、そっと吐き出した。
正直な感想は、塩胡椒をかけて焼いたら旨いかも・・
モンゴルの痩せた大地では作物が育たないため、遊牧民は野菜を食することがほとんどない。
また、冷蔵庫なども無いので、肉の鮮度を維持することができないことから、料理も肉を蒸すことで充分な時間をかけて加熱し食することになる。
つまり、ミネラル分の補給に偏りがあるため、金玉は体調管理のためにも貴重な栄養分なのだろう。
モンゴル相撲の力士が勝てないと、金玉を食いに遊牧民を訪ねてくることがあるらしい。
これも、生きて行く知恵と感慨深く思う私の視線の先には、内股の馬が歩いていた。



フィリピン編

蛙の素揚げ

写真を見ていただいた通りである。
グロいが、実はとても美味しかった。(途中までは・・) 調理方法はモンゴルのタルバガンと同じで、皮を破らないように中身を取り出し、こちらは蛙の肉と野菜をミンチにして詰め込んでいる。
食べ進むと、鮮やかな黄色のチューブが出てきた。
たぶん、蛙の腸。
あまりの鮮やかな色彩にたじろぐが、これも経験ともう一口食らいつき、飲み込もうとした瞬間、腸が破れて中から強烈な薬品臭が溢れだし、強い刺激と共に喉を落ちていった。
たぶん、農薬を微量ずつ蓄積した蛙の内蔵を食べてしまったのだろう。
屋台に毛の生えた程度の食堂だったが、一応人前で戻すのも躊躇われ、「微量なので大丈夫」とコーラで一気に飲み干してしまった。
僅か30分後。冷汗で体はずぶ濡れ、寒気と強烈な腹痛で、のたうち回って苦しみ始めた。
胃の壁が溶けてしまったのか、横になっても角度によっては、ものすごい激痛。
結局、3週間もの間、ずっと苦しんで過ごすことになった。
思い返せば、フィリピン人も誰一人、食べていない。
やはり、ゲテモノは避けて通るに限る。


これからも、様々な物を食することになるのだろうが、日本食も外国人から見るとゲテモノに通じる物が多いらしい。
タイ人からは、「お前ら生きた魚を食べるんだろ」と顔をしかめて言われたこともあるし、モンゴルで大きなナマズを釣り上げ、得意満面で唐揚げを振る舞おうとしたらモンゴル人は全員逃げ出した。
実際、鈴の付いた活き作りなど地獄絵図に描かれた閻魔大王の好物にしか見えないのかもしれない。
様々な国を回ってみて思うが、食に関してチャレンジャーなのは、ほんの僅かな人種らしい。
多くの国の人達の食は、とても保守的なようである。