アラスカ撮影紀行







7〜8月のアラスカは、北海道の秋くらいの気候。
涼しくて、Tシャツの上から一枚羽織って丁度いい感じでした。
行ったときは、まだ夏で緑も深くて、深夜も暗くならずに寝付けない感じでしたが、帰る頃は3時間くらいは真っ暗になり、短い間なのに紅葉が始まり山が何となく黄色に色づいていました。

今回の目標は3つ。
アラスカのブッシュパイロット唯一の日本人、湯口公さんの愛機、ハスキーに乗ってアラスカの大地を空撮する事。
アラスカでも有数の熊の保護地域、カトマイで熊をはじめいろんな野生動物の写真を撮ること。
レンタカーを借りて、熊を求め一人でキャンプ旅をすること。

まず、シアトル、アンカレッジと乗り継ぎフェアバンクスに到着すると、アラスカ大学の教授をしている吉川君(昔からの知り合いです。)と湯口さんが迎えに着てくれました。

翌日、バルディーズ(フェアバンクスから600km南の港町)へ移動し、吉川君のヨットで2泊。
「努力と根性が人生を切り開く」をテーマに盛り上がる。
フェアバンクスに戻り、いよいよ湯口さんのハスキーで、アラスカの空へ。

蛇行した川、無数の沼を次々に撮影して行くと、行く先に山火事を発見。
近づくに従って、規模の大きさに驚愕。
山火事というイメージではない。
しいて言うなら「地球が燃えている。」

フライトを終えると着陸した村を見学し、空港に留めたハスキーの翼の下で、それぞれテントを張って寝たり、ユーコン川の畔までキャンプ道具を運び、冷えたビールで、べろべろになるまで飲み続けたりと、楽しい日々を過ごした。

フェアバンクスまで戻り、駄目もとでカトマイのツアーを聞いてみると、キャンセルが一件あるとのこと。
カトマイは、陸路では行けず、キングサーモンという村から水上飛行機に乗って行き、湖からしか入ることの出来ない特別なところで、多くの有名な熊の写真がとられている。

アンカレッジ->キングサーモン->カトマイの飛行機とホテルがセットになったツアーパックを使わなければ行くことが出来ない上に、なんと、2年分も予約が埋まっているので、通常は行くことが出来ない。

人生の大半の運を使い果たして手に入れた、ツアーチケットは、日本円で13万円+現地の食事等はすべて別途実費。
ちょっと、高くはありませんか?とは思うものの、チャンスを逃したくないので、即申し込みをして、レンタカーを借りてアンカレッジへ。
途中、2回ほど車線を逆走しながらも、ムースや野ウサギ、アラスカ鉄道の写真を撮りながらアンカレッジに着き、翌日の早朝の小型機に乗った。
カトマイに着くと、大雨でとても撮影の出来る状態ではなく、多少焦りながらも、ゆっくりと昼食を取り終えると、雨も小雨になったのでいよいよ待望の熊の撮影。
熊の良く現れる滝で粘ると、4匹の熊が現れ鮭を取る姿を撮ることが出来た。

翌日も朝から熊を撮ったり、オオカミやリスの写真を撮り、ご満悦で水上機に乗った。
アンカレッジ空港へ戻り、レンタカーでさらに南の町、スワードへ向かう。
ここでは、大氷河とラッコや鯨などの野生動物を見れる船が出ているので、とりあえず申し込むが天気が心配。

翌朝になりオフィスに行くと、シケているが予定通り運行するらしい。
出航後すぐに、子供達が船酔いでバタバタと倒れていき、その介護をしている大人が吐き、さらにその周囲の大人が潰れて行く。
外のオープンデッキにはガイドを兼ねたキャプテンがマイクを持ち超ハイテンションで叫ぶ「ミステリアスなブルー(氷河のこと)を見に行こうぜ!」

だが、すでに船内はブルーな人達で一杯だ。
船の揺れはさらに増したところで、相撲取り並に太ったおばちゃんが転倒。
その巨体を支えきれず、足をくじいてしまったらしい。
身内らしい大柄の男性が3人がかりで助け起こそうとするが、4人で船内を転がり回るだけで、どうにもならない。
船内には、「今日はスリリングなクルージングだぁ!」というキャプテンの声が鳴り響いていた。
地獄のツアーは、予定の時間を遙かにオーバーし、5時間半掛かって終了し乗客は互いにもたれあうようにして船を降りていった。

私は船酔いすることもなく、元気!
船酔いに強くて、本当に良かった。
気を取り直して、レンタカーで出発。
いよいよ気ままな旅の始まり。

いい景色や野生動物を求めて車を走らせ、疲れたらテントを張って寝る生活を1週間掛けて行う。
まず食料を調達しガソリンを満タンにして出発。
キャンプ場の若者達に、ビールをご馳走になったり、山の中に一人で、クマ撃退スプレーを抱えて寝たり・・
いろんなことがありましたが、とりあえず、最後に一つだけ。

運転していると、道路脇に小動物の姿が。
ヤマアラシだ。
一端追い抜き、車を降り、カメラを手に近づくと逃げ始めた。
彼は全力で走っているのだが、その速度は人間の小走り程度。
簡単に追いつくとクルッと背中を背中を向けてくる。
これでは写真が撮れない。

しかし、全身の毛と背中の針を敵に向け、じっとするのが彼の最高の防御であり攻撃だ。
ゆっくりと前に回り込むと、また、クルッと背中を向けてくる。
その、後ろ姿に近づくと、いきなり、パン!と大きな音。
尻尾を地面に叩きつけて、大きな音を立てて敵を脅す。
彼は最後の切り札まで使い果たしてしまった。
音の大きさには、確かにちょっとビックリはしたが、もう、2度目は通用しないぞと思い前に回り込む。
もう彼には敵を追い払うすべがない。
困った顔でこちらを見ている。

脅かさないように、「写真撮るだけだからね」優しく声をかけて、ゆっくりカメラを向けるとまたクルリ。
さらに前に回り込んだ時、彼はいきなり捨て身の突進をしてきた。
突然の行動には、さすがに驚いた。
思わず飛びのいたのを見るやいなや、さらに突進してきた。
彼の捨て身の攻撃に、正直、恐怖心が芽生え、思わずとっさに彼を蹴ってしまった。
そんなに強くは蹴ってないが、驚いた彼は近くの茂みに逃げ込み身を丸くした。

罪悪感でいっぱい。
まるっきし、動物虐待。
とりあえず、彼には伝わらぬ詫びを口にして、結局一枚も撮らずに、ゆっくりと撤退した。
すっかり撮る気を失って、フェアバンクスに戻った。

フェアバンクスのショッピングセンターで、子供達のおみやげを買っていると、突然足に激痛が走り全く歩けなくなってしまった。
体を少々酷使したので肉離れを起こしたか、吊ったと思い床に座って、ゆっくりと足を延ばしていると、痛みが少し収まってきた。
ビッコを引きながら、大型のカートを歩行器代わりにしてレンタカーに乗り込んだ。
多少ならアクセルも踏めそうなので、できるだけオートクルーズを使って車を走らせると、キャンプ場の看板が出てきたので、とらえず入りしばらく休むと痛みがだいぶ取れてきた。

まだ早かったが、チェックインしてテントを立てて休んでいると徐々に痛みは引いていった。
痛みが引くと、残り少ない時間がもったいなくなり、100マイル先の崖までアラスカ鉄道を撮りに、車を走らせた。
線路を見下ろす崖を登っていると、また激痛で転倒。
キヤノンのLレンズの前玉におもいっきり傷を付けてしまった。
ヤマアラシの怨念恐るべし!

その後は痛くなることもなく帰国。
久々の風呂に入って足をさすると異物感がある。
押すと痛みがあるので翌日病院へ行き、切開して取り出して貰うと、なんとヤマアラシの針が出てきた。

動物写真を撮るのは難しいです。
知床でクマを追いかけ回して、怯えた目をしたクマを撮るのが耐えきれなくなりカトマイまで行ったのに・・・
いろいろ、学ぶことの多いアラスカの3週間でした。